課せられた革命的任務の自覚が眼覚めたのだ。おれは今暁飛行機で香港にくると陳独秀の革命的遺産をうけついだのだ! 彼は汕頭に落ち延びた。俺は彼の詩人的行動を尊敬する! 俺は彼と別れにのぞんで、ミケルド・モンテニュの「社会の計画の中庸を持し、運命的施設を待つ」の一句を彼に進呈した。
リー・シー・ツワンの綺麗に埃《ほこり》のぬぐわれたエナメルの靴に皹《ひび》が入った。米良は沈黙のうちに人間の傾斜しすぎた賭博心と、彼のしどろもどろの現状が今なお正装した外観のなかに采配を振るのを感じた。
リー・シー・ツワンは米良を抱き締めた。人間の深い愛着が涙によって離れるのであった。
――俺は道化だ。俺は同志の懲戒裁判をうける。しかもなお同志は未来とともに俺のうちにあるのだ。俺は直《ただち》に飛行機で広東に行き重要な三国会議に列する。再び広東が赤い火繩によって燃えあがるとき君は俺が健在であることを思い出してくれ!
――同志、君の心は俺とともにある! と、彼が米良に宣誓するのであった。
そのときイサックがトランクを持って旅装したまま部屋に這入《はい》ってくると、悲壮な別れの挨拶をするのであった。彼の顔
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