云えないし、目前にのみ気を使っている政治家や実業家達が忘れていても不思議はないかもしれない。
こうした極端な程度から少し下がった中等程度の颱風となると、その頻度は目立って増して来る。やっと颱風と名のつく程度のものまでも入れれば中部日本を通るものだけでも年に一つや二つくらいはいつでも数えられるであろう。遺憾ながらまだ颱風の深度対頻度の統計が十分に出来ていないようであるが、そうした統計はやはり災害対策の基礎資料として是非とも必要なものであろうと思われる。
颱風災害防止研究機関の設立は喜ぶべき事であるが、もしも設立者の要求に科学的な理解が伴っていないとすると研究を引受ける方の学者達は後日大変な迷惑をすることになりはしないかという取越苦労を感じないわけには行かないようである。設立者としての政治家、出資者としての財団や実業家達が、二、三年か四、五年も研究すれば颱風の予知が完全に的確に出来るようになるものと思い込んでいるようなことがないとは云われないような気がするからである。
颱風に関する気象学者の研究はある意味では今日でもかなり進歩している。なかんずく本邦学者の多年の熱心な研究のおかげで颱
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