いが、微細な波動がないとは云われないのである。
しかし、また一方から考えると、元来多くの鳥は天性の音楽家であり、鴉でも実際かなりに色々の「歌」を唄うことが出来るばかりでなく、ロンドンの動物園にいたある大鴉などは人が寄って来ると“Who are you ?”と六《むつ》かしい声で咎めるので観客の人気者となったという話である。そんなことから考えると、鴉がすぐ耳元で歌っている歌に合わせて頸を曲げるぐらいは何でもないことかもしれない。
とにかく、これに関してはやはり『野鳥』の読者の中に知識を求めるのが一番の捷径《しょうけい》であろうと思われるので厚顔《あつかま》しくも本誌の余白を汚《けが》した次第である。[#地から1字上げ](昭和十年二月『野鳥』)
底本:「寺田寅彦全集 第四巻」岩波書店
1997(平成9)年3月5日発行
入力:Nana ohbe
校正:浅原庸子
2005年3月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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