がやはり一種の嘘であるに相違ない。
九
ある偏屈だと人から云われている男が、飼猫に対する扱い方が悪いと云ってその夫人を離縁した。そういう噂話をして面白がって笑っている者があった。
表面に現われたそれだけの事実を聞けば、なるほどおかしく聞こえる。しかし、その男が元来どうしてそれほどまでに猫を可愛がるようになったかという過程を考えてみる、そうすると彼の周囲の人間が、少なくも彼の目から見て、彼の人間らしい暖かい心を引出す能力を欠いていたのではないかという疑いが起る。もしそうだとすると彼は淋しい人である。
こういう男にとって、その飼猫に対する細君《さいくん》の待遇は、そのままに彼自身に対する待遇である。猫に対する冷酷はすなわち夫に対する冷酷ではあるまいか。
こう考えると私はこの男を笑う気にはどうしてもならなくなった。
[#地から1字上げ](大正十二年十月『週刊朝日』)
十
芝生に水をやるのに、十分に、たっぷり、土の底深く浸み込むまでやることにしなければいけない。もし、ほんの表面の薄い層だけ湿《しめ》るようなやり方をしていると、芝の根がついつ
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