見ていた子供らは、落ちて来るのを拾い、鋏《はさみ》にはさまったのをはずしたりした。二人の子が順番でかわるがわる取るのであったが、年上のほうは虫に手をつけるのをいやがって小さなショベルですくってはジャムの空罐《あきかん》へほうり込んでいた。小さい妹のほうはかえって平気で指でつまんで筆入れの箱の上に並べていた。
庭の楓《かえで》のはあらかた取り尽くして、他の木のもあさって歩いた。結局数えてみたら、大小取り交ぜて四十九個あった。ジャムの空罐一つと筆入れはちょうどいっぱいになった。それを一ぺん庭の芝生《しばふ》の上にぶちまけて並べてみた。
一つ一つの虫の外殻《がいかく》にはやはりそれぞれの個性があった。わりに大きく長い枯れ枝の片を並べたのが大多数であるが、中にはほとんど目立つほどの枝切れはつけないで、渋紙のような肌《はだ》をしているのもあった。えにしだ[#「えにしだ」に傍点]の豆のさやをうまくつなぎ合わせているのもあって、これがのそのそはって歩いていた時の滑稽《こっけい》な様子がおのずから想像された。
なかんずく大きなのを選んで袋を切り開き、虫がどうなっているかを見たいと思った。竿《さお
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