土を木の皮に交ぜて間に合わせる事がある。また医薬として土を用いた例はアルメニアやスペインにもある。それから魔法を使うために土を呑む事もあるそうである。土を食う分量はもとより一定せぬが、オットマック土人は一日に半ポンドも食うという。食い方は生で食うのも焼いて食うのもあり、また粉のままで食う事もあれば、人の形、動物の形あるいは皿のような形にこねてかじる事もあるという話である。
航海の未来
近頃英国の製鉄所で所長のサー・ヒュー・ベル氏が愉快な未来記めいた演説をやった。すなわち遠からざる将来において、船には蒸気機関のような重い場ふさげなものは入《い》らなくなり、ナイアガラ辺で起した強大な電力を無線電信で洋上の船に送り、軽少な器械で巨船を動かすような事になるだろう。今日こんな話はあまりに夢のように聞えるかも知れぬが、過去百年間の歴史に鑑《かんが》みればそのくらいな事は出来るはずだと云ったと聞き及ぶ。
[#地から1字上げ](明治四十年九月十七日『東京朝日新聞』)
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六
結核の初期診断法
一時有名であったコッホのツベルクリンは、そ
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