量と脳髄の重量との比例を調べてみた。その結果によれば、比較的重い脳をもっているものは人間の外に手長猿、鸚鵡《おうむ》、はつか鼠、駒鳥などで、これらのものの脳は体量の二十分の一ないし百分の一くらいの目方である。百分の一近辺のものは猩々《しょうじょう》、鹿、猫など、それから下って百分の一より千分の一の間にあるのが麒麟《きりん》、象、羚羊《かもしか》、獅子、袋鼠、鷲、白鳥、雉《きじ》、鼠、蛙、鯉など、なお一層下って千分の一より一万分の一の間には海馬《セイウチ》、鯨、鰐《わに》、海鰻《あなご》、章魚《たこ》などがひかえている。それで現世界における動物の脳の目方は体量の二十分の一以下万分の一の間にあるものと思えばよい。尤も畸形児などでは大きな頭のもあるがそういうのは別である。右の結果で鸚鵡が比較的重い脳をもっている事や、象などが鼠や蛙と相伍しているのはちょっと面白い。

      野獣の写真

 動物園で色々の野獣の形状だけは見る事が出来ても、その天然の棲所《すみか》でどんな挙動をしているかという事は分らぬ。殊に人目を嫌って逃げるものや、夜間のみ出あるく獣の天真の態度はなおさら知り難い。が、近
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