えると、生れる雛の雌雄いずれが多いかという事はその親鳥の食餌《えさ》や鳥屋の温度その他の周囲の状況できまるものだという事が分る。もし他の諸動物についても同様の事があるかないか調べてみたら面白いだろう。

      指頭の渦紋

 人間の指の渦紋の形は生れ落ちてから死ぬるまで変らないもの故、人間の見覚えをするには最もよい目印しである。それで現に罪人などの指形を紙に写しておいて再犯の時の参考にする事がある。これならば額のほくろや瘤《こぶ》などよりは確かな事は勿論であろう。そこで十本の指の紋がことごとく符合するようなものが二人以上あるだろうかと云うに、ある数学者の計算した結果によればザット六十四万億以上の人間を集めなければ同じ指の人は二人とはあるまいという事である。世界の人口|悉皆《しっかい》でもわずかに二十億に足らずだから、先ず同じ人はないと見てよかろう。今に指形を印に親子の再会などという新聞種が出来るかも知れぬ。
[#地から1字上げ](明治四十年九月七日『東京朝日新聞』)
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         四

      脳髄の重さ

 仏国の某学者が、種々の動物について、その全体
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