でもこれを拾うた人はその場所と時日を通知するように依頼してあった。ところが昨年の五月にアフリカのソマリの海岸でその中の一本を拾い上げ、また今年の七月同じ処で他の一本を拾い上げた。それでインド洋の真中から西の方へ向うた不断の潮流がある事が知れる、云々」。北太平洋のもあるいはこの仲間でないとも限らぬから罎《びん》の写真でも撮って知らしてやったらよかろうと思う。
[#地から1字上げ](明治四十年十一月二十八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         四十七

      英国の軍用軽気球

 先月初、ロンドン附近で軍用軽気球の試乗があった。アルダーショットからロンドンまで一時間二十四マイルの速度で飛行し、聖《セント》ポールの寺院を一まわりして今度は風に逆らって進んだが、あまり風が強かったから水晶宮の辺で地上に下った。飛行した全距離五十マイル、地面より平均七百五十フィートの高さを航したそうである。

      狂人の眼と髪

 これはスコットランドの話で我邦には応用し難いかも知れぬが、同地の瘋癲《ふうてん》病院で調査した処によれば、統計上狂者には普通の人よりも眼の色が薄く髪の色
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