店の名を付けなかったが、商売は非常に繁昌し子孫代々名無しの牛屋で通っている。名を付けると先代以来の幸運に障るというような迷信から子も孫も屋号を付けなかったためだそうな。
[#地から1字上げ](明治四十年十一月二十日『東京朝日新聞』)
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         四十二

      ラジウムの新産地

 従来ラジウムの産地と云えばほとんどボヘミアに限られていたが、この頃アルプス山で有名なシンプロン隧道《トンネル》附近にかなり多量のラジウムがあるという事がわかったそうな。同隧道の奥の方の地温が著しく高いのはラジウムが発する熱のためではないかという説がある。

      水の清浄法

 近頃汚水から清水《せいすい》を得るのに電気分解を用いる法が出来た。汚水中にアルミニウムの電極を入れて電流を通ずれば、過酸化アルミニウムを生じ、これが種々の汚物に結合して固まってしまう。これを一遍|漉《こ》せば非常に清浄な水が得られるそうである。
[#地から1字上げ](明治四十年十一月二十一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         四十三

      長距離の急行列車

 去る九月
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