気を呼吸するのは衛生上有害ではないかという事を近頃ニューヨークで調査した。隧道内の空気中にはレールや機関の摩擦のために生ずる微細な鉄粉がかなりに浮游しているが、これは案外人体を害《そこな》わないそうである。むしろ坑内の温度の急変が健康に悪いだろうとの事である。
[#地から1字上げ](明治四十年十一月一日『東京朝日新聞』)
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三十二
有益な鼠
北米に産する地鼠の一種に尻尾《しっぽ》の短いのがある。この鼠は蝸牛《かたつむり》などを捕って食物とし、余った外は貯えておいて欲しい時に出して食い、殻は巣の内外に積んでおく。また作物を荒らす有害な野鼠や虫類なども捕って食うので農夫にとっては非常に有益なものだそうな。
[#地から1字上げ](明治四十年十一月八日『東京朝日新聞』)
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三十三
世界第一の巨船
現今世界で最大最速の汽船ルシタニア号は去る九月アイルランドのクイーンスタウンよりニューヨークまで二千七百八十二|浬《かいり》の航路を五昼夜と五十四分間に、すなわち一時間二十三浬〇一の速度で快走した。
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