を鳴らしている。船の方では船底に仕掛けた微音機《マイクロフォン》でこの音を聞くという細工である。目下大西洋並びに沿岸航路でこれを使用している灯台船が五十六艘、汽船が二百十艘ある。英皇およびドイツ皇帝の遊船《ヨット》にもこの装置を備えてあるそうだ。
[#地から1字上げ](明治四十年十月三十一日『東京朝日新聞』)
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         三十一

      世界一の高圧電流

 米国ミシガンのマスケゴン電力会社で昨年来使用している高圧電流は七万二千ボルトの高圧でけだし世界第一と称せられている。その電線の経路九十二マイルの間は近辺の樹林を切り開き、また人の近づかぬように不断|巡邏《じゅんら》している。何しろ非常な高圧であるから漏電を防ぐ絶縁器には特別のものを用いているが、それでも多少の放電が止みなくある故、柱の一部がだんだん焦げて来るそうである。一度落雷のために絶縁器がこわれた時などは、電柱は強い電流のために即座に焼けてしまった。この電線に障害を与えた者は一年間の禁錮に処せらるるという事である。

      地下電車鉄道の衛生問題

 地下鉄道で長い間|隧道《トンネル》内の空
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