1字上げ](明治四十年十一月十三日『東京朝日新聞』)
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         三十八

      世界で最大のダイアモンド

 近頃トランスバール政府ではその所有に属する世界最大の金剛石《ダイアモンド》を英国皇帝に献ずる事に決した。この宝石の発見されたのは一昨年の正月の事であった。プレトリアという所に近い採掘場で地下十八フィートの穴から見出された。その重量三千二十四カラット強で、従来世界第一と称せられていたものの三倍以上である。長径四インチ短径二インチくらい、色はやや蒼味を帯びているが非常に純粋なるものだそうな。この石の結晶の形から察する所、これはよほど巨大な金剛石の一半が欠損したものだろうという。これを採掘したプレミアー会社社長の名を取ってクリナンダイアモンドと命名されている。
[#地から1字上げ](明治四十年十一月十六日『東京朝日新聞』)
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         三十九

      赤茄子《トマト》の伝来

 洋食に用いるトマトの来歴を調べた人の説によると、この植物は十六世紀の中頃に南米ペルーからスペインあるいはポルトガルに渡りそれから欧洲に拡がったものである。しかしその頃は単に飾り物に使うだけの事で栽培もあまり盛んでなかったが、十九世紀になって後だんだん食用せらるるようになったそうである。[#地から1字上げ](明治四十年十一月十七日『東京朝日新聞』)
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         四十

      ノルウェーの夫婦匙《めおとさじ》

 ノルウェーで結婚式の時に用いる木彫の匙《さじ》がある。鎖で二つの匙をつないだようなものであるが、ただ一本の木で作るそうな。結婚の朝、新郎新婦はこの夫婦匙で睦まじく御馳走を食うという。

      リウマチスと蜂の毒

 蜂に刺されるとリウマチスが癒《なお》るという云い伝えが英国辺りで昔から行われているので、その真否を試すために材料を集めている人がある。我邦でもそういう例があるかどうだか御存じの方は教えて頂きたい。
[#地から1字上げ](明治四十年十一月十九日『東京朝日新聞』)
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         四十一

      一種の迷信

 英国デボンシャイアのある町に百二十年来営業を続けている牛肉屋があるが、開店の昔から今日まで店に屋号というものがない。この店の先祖がどういう訳だか
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