の味はなくはないであろうが、しかしこういうものばかりが続いてはおそらく倦怠《けんたい》を招くに相違ない。
次に「連作論」に引用された「病牀即事《びょうしょうそくじ》」を詠じた十首は、もう少し複雑になっている。「月」は毎句にあり、「ガラス戸」が六、「鳥かごの屋根」と「森」と「ランプ」が各二あるが、そのほかにもいろいろの景物が点綴《てんてつ》され、ほととぎすや白雲や汽車やブリキや紙や杉木立《すぎこだ》ちやそういうものの実感が少しずつ印象され、また動作や感覚の上でもだいぶ変化が見えている。また毎句にある「月」でも一首の頭からおわりまでいろいろの位置に分配されているのに気がつく。この場合では、一つの場所の光景をいろいろな角度に見たスケッチを総合したような形式になっている。
その次に引用された十首は春秋の草花に対して自分の病の悲しみを詠じたものであるが、これには異種の植物名が八つとほかに「秋草花」という言葉が現われ、「春」の字が三、「秋」が二、そうして十首のおのおのにいろいろな形で病者の感慨が詠《よ》み込まれている。これは共通な感じを糸にしていろいろの景物を貫ぬいた念珠のような形式である。
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