一つの方法は、かくして得た付き過ぎの「第一次付け句」をとって、あたかも前に「前句」に対して行なったと同様な取り扱いをこれに適用するのである。そうして得たあらゆる隣接観念の世界に対して、以上の淘汰《とうた》整理をもう一ぺん行ない、そうして生き残った若干の結果の中から試みに「第二次の付け句」を構成して、それを再び「所定の前句」に対照してみるのである。そのようにして、第三次、第四次の付け句を作って行くうちには必ず少なくも自分では適当と思われるものの骨格だけは得られるのである。それでもどうしても思わしくない場合にはこれは断念放棄して、さらに第二の予選候補者を取り上げて同様な推敲《すいこう》に取りかかるのである。
 以上はただ付け句の素材だけについての選択の過程であって、それの表現法いかんについてはさらにまた全然別途の主要な作業が始まるわけであるが、そういう方面の問題はこの項ではいっさい触れないことにしようと思う。ともかくも普通はまず素材がきまってからその上での表現であるから、付け方の第一歩は、持って来る「もの」や「こと」の適否にあることはもちろんである。もっとも、少し立ち入って考えると、実際は
前へ 次へ
全88ページ中43ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング