な音がしている。行って見るとインド人が四人、ナインピンスというのだろう、木の球《たま》をころがして向こうに立てた棍棒《こんぼう》のようなものを倒す遊戯をやっている。暗い沈鬱《ちんうつ》な顔をして黙ってやっている。棍棒が倒れるとカランカランという音がして、それが小屋の中から静かな園内へ響き渡る。リップ・ヴァン・ウィンクルの話を思い出しながら外へ出る。木のこずえにとまった一羽の鴉が頭を傾けて黙ってこっちを見ていた。……ゴロゴロ、カランカランという音が思い出したように響いていた。
[#地から3字上げ](大正九年六月、渋柿)

     二 ホンコンと九竜

 夜の八時過ぎに呉淞《ウースン》を出帆した。ここから乗り込んだ青島《チンタオ》守備隊の軍楽隊が艫《とも》の甲板で奏楽をやる。上のボートデッキでボーイと女船員が舞踊をやっていた。十三夜ぐらいかと思う月光の下に、黙って音も立てず、フワリフワリと空中に浮いてでもいるように。
四月四日
 日曜で早朝楽隊が賛美歌を奏する。なんとなく気持ちがいい。十時に食堂でゴッテスディーンストがある。同じ事でも西洋の事は西洋人がやっているとやはり自然でおかしくない
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