しかし多くの蜂について従来知られている事実から推してこの残りの半分も、それの正当な権利者の巣に搬《はこ》ばれたものと思ってもいいだろう。実際は他の巣の住民に横領されたかもそれは分らない。
私はこの蜂の巣を見付けたい、そしてこの珍奇な虫の団子がそこでいかに処理されるかを知りたいものだと思っている。
虫の行為はやはり虫の行為であって、人間とは関係はない事である。人として虫に劣るべけんやというような結論は今日では全く無意味な事である。それにもかかわらず虫のする事を見ていると実に面白い。そして感心するだけで決して腹が立たない。私にはそれだけで充分である。私は人間のする事を見ては腹ばかり立てている多くの人達に、わずかな暇を割いて虫の世界を見物する事をすすめたいと思う。[#地から1字上げ](大正十年七月『解放』)
底本:「寺田寅彦全集 第二巻」岩波書店
1997(平成9)年1月9日発行
入力:Nana ohbe
校正:noriko saito
2005年2月20日作成
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