は「オーイ早く菓子を持って来い」と大声で云おうとするが舌がもつれて云えない。そこで眼がさめたが、何だかうなされて唸《うな》っていたそうである。
これも前日か前々日の体験中に夢の胚芽らしいものが見付かる。食卓でちょっと持出されたダンテ魔術団の話と、友人と合奏のときに出たフォイヤーマンのセロ演奏会の噂とでこの夢の西洋人が説明される。魔術が曲馬に変形してそれが猛獣を呼出したと思われる。それからやはり前夜の食卓で何かのついでから、ずっと前に動物園の猛獣が逃出した事のあった話をした。それが猛獣肉薄の場面を呼出したかもしれない。「御菓子を持って来い」がどうも分らないが、しかしその前々夜であったかやはり食後の雑談中女中にある到来ものの珍しい菓子を特に指定して持って来させたことはあったのである。
麻糸の簾《すだれ》がライオンになる件だけは解釈の糸口が見付からない。こんなのをうっかりフロイドにでも聞かせると、とんでもないことになるかもしれないという気もするのである。
上記の夢を見てから一と月も後に博物館で伎楽《ぎがく》舞楽能楽の面の展覧会があって見に行った。陳列品の中に獅子舞の獅子の面が二点あった
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