方則について
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)喋々《ちょうちょう》しようとは

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|匁《もんめ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから3字下げ]
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 科学の方則は物質界における複雑な事象の中に認められる普遍的な連絡を簡単な言葉で総括したものである。事実の言い表わしであって権利も義務も訓戒も含まれていない。しかし今ここで方則の定義や法律と方則との区別などを喋々《ちょうちょう》しようとは思わぬ。ただかくのごとき方則というものが如何にして可能であるかという事に関して浅薄ながら半面観を試みたい。
 方則が可能であるためには宇宙の均等という事が必要である。時と空間に対して不変な事実が認め得られる事が必要である。かくのごとき事実が吾人《ごじん》に認め得られるというのは不思議な事ではあるまいか。
 華厳経《けごんきょう》に万物相関の理というのが説いてあるそうである。誠に宇宙は無限大でその中に包含する万象の数は無限である。しかしてこれらは互いになんらかの交渉を有せぬも
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