物理学実験の教授について
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)当て嵌《は》め

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)措置|如何《いかん》は

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)A′[#「A′」は縦中横]
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 理化学の進歩が国運の発展に緊要であるという事は永い間一部の識者によって唱えられていたが、時機の熟せなかったため一向に世間には顧みられなかった。欧洲の大戦が爆発して以来は却って世間一般特に実業者の側で痛切にこの必要を感ずるようになったと見え、公私各種の理化学的研究所が続々設立されるようになった。それと同時に文部省でも特に中等教育における理化学教授に重きをおかれるようになって、単に教科書の講義を授くるのみならず、生徒自身に各種の実験を行わせる事になり、このために若干の補助費を支出する事になった。これは非常によい企てである。どうかこのせっかくの企てを出来るだけ有効に遂行したいものである。
 自分は中等教育というものについては自分でこれを受けて来たという以外になんらの経験もないものであるが、ただ年来大学その
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