こっそりその中へ吐き込んだ人がある。自分も何かしら書きたいことがあって筆を取ったはずであったが、思うことがなかなか思うように書けないので、途中で打切ってさて何遍となく行を改めて更に書出してみても、やはりうまく書けない。思うことの書けないのは世の中のせいかというような気もするが、これも猫の穴掘りと同様に実は自分の筆の通じが悪いせいかもしれないのである。[#地から1字上げ](昭和九年一月『大阪朝日新聞』『東京朝日新聞』)



底本:「寺田寅彦全集 第四巻」岩波書店
   1997(平成9)年3月5日発行
入力:Nana ohbe
校正:砂場清隆
2005年8月19日作成
青空文庫作成ファイル:
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