備忘録
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)修善寺日記《しゅぜんじにっき》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)菓子屋|駄菓子屋《だがしや》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)相※[#「門<兒」、146−13]《あいせめ》ぐような

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)チリギクチリギク/\
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     仰臥漫録

 何度読んでもおもしろく、読めば読むほどおもしろさのしみ出して来るものは夏目先生の「修善寺日記《しゅぜんじにっき》」と子規《しき》の「仰臥漫録《ぎょうがまんろく》」とである。いかなる戯曲や小説にも到底見いだされないおもしろみがある。なぜこれほどおもしろいのかよくわからないがただどちらもあらゆる創作の中で最も作為の跡の少ないものであって、こだわりのない叙述の奥に隠れた純真なものがあらゆる批判や估価《こか》を超越して直接に人を動かすのではないかと思う。そしてそれは死生の境に出入する
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