州《まんしゅう》をそれと同緯度の西欧諸国と比べてみればわかると思う。ただ日本はその国土と隣接大陸との間にちょっとした海を隔てているおかげでシベリアの奥にある大気活動中心の峻烈《しゅんれつ》な支配をいくらか緩和された形で受けているのである。
比較的新しい地質時代まで日本が対馬《つしま》のへんを通して朝鮮と陸続きになっていたことは象や犀《さい》の化石などからも証明されるようであるが、それと連関して、もしも対馬朝鮮の海峡をふさいでしまって暖流が日本海に侵入するのを防いだら日本の気候に相当顕著な変化が起こるであろうということは多くの学者の認めるところである、この一事から考えても日本の気候は、日本のごとき位置、日本のごとき水陸分布によって始めて可能であること、従って日本の気候が地球上のあらゆるいわゆる温帯の中でも全く独自なものであることが了解できるであろうと思われる。
このような理由から、日本の気候には大陸的な要素と海洋的な要素が複雑に交錯しており、また時間的にも、週期的季節的循環のほかに不規則で急激活発な交代が見られる。すなわち「天気」が多様でありその変化が頻繁《ひんぱん》である。
雨の
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