二科会その他
寺田寅彦
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)広重《ひろしげ》の版画
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)中川|紀元《きげん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)すし[#「すし」に傍点]
−−
安井氏の絵はだんだんに肩の凝りが解けて来たという気がする。同時にだんだん東洋人らしいところが出て来るように見える。もう一歩進むと結局南画のようなものに接近する可能性を持っているのではないかと思われる。あの裸体の少女でも、あれを少しどうかすると支那画の童子のような感じが出そうである。
そう云えば、すぐ隣りにある山下氏の絵にもやはり東洋人が顔を出している。雪景色の絵などはどこか広重《ひろしげ》の版画の或るものと共通な趣を出している。
津田君の小品ではこの東洋人がむき出しに顔を出している訳である。
坂本氏の絵がかなり目立っている。これに対する向い側の壁に大分猛烈な絵が並んでいるので、コントラストの作用で一層この人の絵が静かに上品に見える。しかし自分には何だか完全に腑《ふ》に落ち切らない一種の物足りなさが感
次へ
全6ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング