乗って空席を捜す。二人の間にやっと自分の腰かけられるだけの空間を見つけて腰をおろす。そういう場合隣席の人が少しばかり身動きをしてくれると、自然に相互のからだがなじみ合い折り合って楽になる。しかし人によると妙にしゃちこばって土偶《どぐう》か木像のように硬直して動かないのがある。
 こういう人はたぶん出世のできない人であろうと思う。
 もっとも、こういう人が世の中に一人もなくなってしまったら、世の中にけんかというものもなくなり、国と国との間に戦争というものもなくなってしまうかもしれない。そうなるとこの世の中があまりにさびしいつまらないものになってしまうかもそれはわからない。
 こういう人も使い道によっては世の中の役に立つ。たとえば石垣《いしがき》のような役目に適する。もっとも石垣というものは存外くずれやすいものだということは承知しておく必要がある。

       七

 むかでの歩くのを見ていると、あのたくさんの足が実に整然とした運動をしている。一種の疎密波が身長に沿うて虫の速度よりは早い速度で進行する。
 もしか自分がむかでになってあれだけのたくさんな足を一つ一つ意識的に動かして、あの
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