をすかして見ると、ちらちらしたものが見えることがあります。あの「かげろう」というものも、この茶わんの底の模様と同じようなものです。「かげろう」が立つのは、壁や屋根が熱せられると、それに接した空気が熱くなって膨脹してのぼる、そのときにできる気流のむら[#「むら」に傍点]が光を折り曲げるためなのです。
このような水や空気のむら[#「むら」に傍点]を非常に鮮明に見えるようにくふうすることができます。その方法を使って鉄砲のたまが空中を飛んでいるときに、前面の空気を押しつけているありさまや、たまの後ろに渦巻《うずまき》を起こして進んでいる様子を写真にとることもできるし、また飛行機のプロペラーが空気を切っている模様を調べたり、そのほかいろいろのおもしろい研究をすることができます。
近ごろはまたそういう方法で、望遠鏡を使って空中の高いところの空気のむら[#「むら」に傍点]を調べようとしている学者もいたようです。
次には熱い茶わんの湯の表面を日光にすかして見ると、湯の面に虹《にじ》の色のついた霧のようなものが一皮かぶさっており、それがちょうど亀裂《きれつ》のように縦横に破れて、そこだけが透明に見
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