そういう仮定を置いた上で従来よりももう少し立ち入った神話の研究をしてもよくはないかと思うのである。
 きのうの出来事に関する新聞記事がほとんどうそばかりである場合もある。しかし数千年前からの言い伝えの中に貴重な真実が含まれている場合もあるであろう。少なくもわが国民の民族魂といったようなものの由来を研究する資料としては、万葉集などよりもさらにより以上に記紀の神話が重要な地位を占めるものではないかという気がする。
 以上はただ一人の地球物理学者の目を通して見た日本神話観に過ぎないのであるが、ここに思うままをしるして読者の教えをこう次第である。
[#地から3字上げ](昭和八年八月、文学)



底本:「寺田寅彦随筆集 第四巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店
   1948(昭和23)年5月15日第1刷発行
   1963(昭和38)年5月16日第20刷改版発行
   1997(平成9)年6月13日第65刷発行
※底本の誤記等を確認するにあたり、「寺田寅彦全集」(岩波書店)を参照しました。
入力:(株)モモ
校正:かとうかおり
2000年10月3日公開
2003年10月30日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全4ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング