石油ランプ
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)小さな隠《かく》れ家《が》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)ランプの心《しん》は一|把《わ》でなくては売らない

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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(この一篇を書いたのは八月の末であった。九月一日の朝、最後の筆を加えた後に、これを状袋に入れて、本誌に送るつもりで服のかくしに入れて外出した。途中であの地震に会って急いで帰ったので、とうとう出さずにしまっておいた。今取出して読んでみると、今度の震災の予感とでも云ったようなものが書いてある。それでわざとそのままに本誌にのせる事にした。)
[#ここで字下げ終わり]

 生活上のある必要から、近い田舎の淋しい処に小さな隠《かく》れ家《が》を設けた。大方は休日などの朝出かけて行って、夕方はもう東京の家へ帰って来る事にしてある。しかしどうかすると一晩くらいそこで泊るような必要が起るかもしれない。そうすると夜の燈火の用意が要る。
 電燈はその村に来ているが、私の家は民
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