昭和二年の二科会と美術院
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)有島生馬《ありしまいくま》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「瀟−くさかんむり」、第4水準2−79−21]
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二科会(カタログ順)
有島生馬《ありしまいくま》氏。 この人の色彩が私にはあまり愉快でない。いつも色と色とがけんかをしているようで不安を感じさせられる。ことしの絵も同様である。生得の柔和な人が故意に強がっているようなわざとらしさを感じる。それかと言ってルノアルふうの風景小品にもルノアルの甘みは出ていない。無気味さがある。少し色けを殺すとこの人の美しい素質が輝いて来ると思う。
ビッシエール。 この人の絵には落ち着いた渋みの奥にエロティックに近い甘さがある。ことしのは少し錆《さび》が勝っている。近ごろだいぶこの人のまねをする人があるが、外形であの味のまねはできない。できてもつまらない。
石井柏亭《いしいはくてい》。 「牡丹《ぼたん》」の絵は前景がちょっ
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