小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」
寺田寅彦
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)小泉八雲《こいずみやくも》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今度|小山《おやま》書店
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「オ」に白丸傍点]
−−
十余年前に小泉八雲《こいずみやくも》の小品集「心」を読んだことがある。その中で今日までいちばん深い印象の残っているのはこの書の付録として巻末に加えられた「三つの民謡」のうちの「小栗判官《おぐりはんがん》のバラード」であった。日本人の中の特殊な一群の民族によっていつからとも知れず謡《うた》い伝えられたこの物語には、それ自身にすでにどことなくエキゾティックな雰囲気がつきまとっているのであるが、それがこの一風変わった西欧詩人の筆に写し出されたのを読んでみると実に不思議な夢の国の幻像を呼び出す呪文《インカンテーション》ででもあるように思われて来る。物語の背景は現にわれわれの住むこの日本のようであるが、またどこかしら日本を遠く離れた、しかし日本とは切っても切れない深い因縁でつながれた未知の国土で
次へ
全7ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング