雑記(1[#「1」はローマ数字、1−13−21])
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)日比谷《ひびや》で

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)ある朝|築地《つきじ》まで用があって

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十二年一月『中央公論』)

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)まちがえてポーア/\と云っている
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      一 日比谷から鶴見へ

 夏のある朝|築地《つきじ》まで用があって電車で出掛けた。日比谷《ひびや》で乗換える時に時計を見ると、まだ少し予定の時刻より早過ぎたから、ちょっと公園へはいってみた。秋草などのある広場へ出てみると、カンナや朝貌《あさがお》が咲きそろって綺麗《きれい》だった。いつもとはちがってその時は人影というものがほとんど見えなくて、ただ片隅のベンチに印半纏《しるしばんてん》の男が一人ねそべっているだけであった。木立の向うにはいろいろの色彩をした建築がまともに朝の光を浴びて華やかに輝いていた。
 こんなに人出
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