に、溶液の干上《ひあ》がるに従って、液面が周囲の器壁に接する境界線の所に、粉状の塩の土手ができる。それがやはり週期的な同心環の系列となって成長して行く現象が知られている。この場合はクントや米田《よねだ》氏の現象のように器械的振動は別に参与していると思われない。この際器壁に沿う気流があるから、あるいはここでも一種の渦動《かどう》が関係するかとも想像されるが、もしそれだけならば、大概の塩について同様でありそうなのに、特殊な塩に限って顕著であることから考えると、これはもっと分子物理学的または化学的領域の中にまで立ち入らなければならないような種類の現象であるかもしれない。
そういう科学的な週期的形像中の最も顕著なもので、従来はなはだ多くの研究の対象となったものは、いわゆるリーゼガングの現象である。これに関してはかなりいろいろな説明的理論も提出されておりはするが、一言で言ってしまえば、要するにほとんどまだ目鼻もつきかねたようなありさまであるらしい。ともかくもこの現象は拡散に随伴する週期的現象である。言わば√−1[#「√」の中に「−1」]を含むイマジナリーな部分から成る拡散現象であるとも言われる
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