るようなうわさはさっぱり聞かない。愚かなるわれら杞人《きひと》の後裔《こうえい》から見れば、ひそかに垣根《かきね》の外に忍び寄る虎《とら》や獅子《しし》の大群を忘れて油虫やねずみを追い駆け回し、はたきやすりこ木を振り回して空騒《からさわ》ぎをやっているような気がするかもしれない。これが杞人の憂いである。
[#地から3字上げ](昭和六年一月、中央公論)
底本:「寺田寅彦随筆集 第二巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店
1947(昭和22)年9月10日第1刷発行
1964(昭和39)年1月16日第22刷改版発行
1997(平成9)年5月6日第70刷発行
入力:(株)モモ
校正:かとうかおり
2003年6月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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