、当時ではかなりオリジナルな面白い試みであったと思われる。船舶工学方面の研究では、波浪による船のヨーイングに関するもの、同じくドリフトに関するもの、いずれも理論的計算のみならず、簡単な模型実験を行ってその結果を比較したものである。これらは英国造船協会の雑誌に掲載され、当時の学界の注意を引いたものである。同協会から賞牌を贈られたのは多分これに関聯してではなかったかと想像される。また船舶の胴体に働く剪断応力《せんだんおうりょく》の分布について在来の考えの不備な点を考察した論文がある。これも重要なもので、多くの外国の教科書等にも同君のこの論文が引用されている。また船が進水した時に気温と水温との差違のために意外な応力を生じる。これも以前には誰も詳しく研究したものがなかったのを末広君が初めて正当な解釈を与えた。また陸上では起らぬようなタービンの故障が舶用タービンでしばしば起るのはタービン・ディスクの廻転に船の動揺が作用するためのジャイロスコピック・アクションに起因する盤の振動によるものであろうということに着目して、この不可解の問題を解決した。これらと聯関して舶用のタービン・ロートルのダイナミカル
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