高知がえり
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)御萩《おはぎ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)商人|体《てい》の男二人
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](明治三十四年十一月)
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ザブ/\
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明後日は自分の誕生日。久々で国にいるから祝の御萩《おはぎ》を食いに帰れとの事であった。今日は天気もよし、二、三日前のようにいやな風もない。船も丁度あると来たので帰る事と定める。朝飯の時勘定をこしらえるようにと竹さんに云い付ける。こんどはいつ御出《おい》でかと例の幡多訛《はたなま》りで問う。おれの事だからいつだかわからんと云ったような事を云うてザブ/\とすまし、机の上をザット片付けて革鞄《かばん》へ入れるものは入れ、これでよしとヴァイオリンを出して second position の処《ところ》を開けてヘ調の「アンダンテ」をやる。1st とちがって何処《どこ》かに艶があってよい。袷《あわせ》を綿入に着かえて重くるし
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