で、そういう時に最も快適な平衡のとれた心情の動きを享有することが出来るのだと仮定する。
 一方でまたこの分泌には一年を週期とする季節的変化があって、その最高《マキシマム》が晩春、最低《ミニマム》が初秋のころにあると仮定する。それからまたその週期的な波の「平均水準」が人々によって色々違うのみならず、同一個人でも健康状態によりまた年齢により色々ちがうものとする。さらにまたその平均水準の上下に昇降する週期的変化の「振幅《アンプリチュード》」がやはり人によって色々の差があり、ある人は春秋の差がそれほど大きくないのに、ある人はそれが割合に大きいという風な変異《ヴェリエーション》があるものとする。
 数式で書き現わすと、この問題の分泌量Hがざっと H = H0[#「0」は下付き小文字] + A sin nt のような形で書き現わされその平均水準のH0[#「0」は下付き小文字][#「H0[#「0」は下付き小文字]」は縦中横]と振幅Aとが各個人の各年齢で色々になる量だとする。そこで今いちばん適当なHの量を仮にKだとすると、上式をKに等しいと置いたときにその式を満足するような時間tに相当する時季がその人
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