強からしめ、研究的態度に出でしむるようにありたい。科学的の知識はそうそうたやすく終局に達せらるるものではない事を呑み込ませて欲しいものである。時には更に反問して彼等に考えさせることも必要である。勿論児童の質問があるごとにかように話しているわけにはゆかないが、教師の根本態度が、この考えであってほしいのである。
それから小学校では少し無理かも知らないが、科学の教え方に時々歴史的の色彩を加味するのも有益である。勿論科学全体の綜合的歴史はとても教えることは出来ないが、ある事項に関する歴史でよろしい。たとえば太古では世界は地(土)、水、火、風の四からなりたっていると考えたが、その後化学的元素というものが確定され、漸次に新元素が発見され今は八十余の元素がいろいろ組合わされてあらゆる物質を構成していると考うるようになった、つい近頃までは元素は永久不変なものと考えられていたが、ラジウムのような物質が発見され研究された結果、元素もまた変化し得る事が明らかになり、同時に元素の原子の内部の構造も考えなければならぬようになった、そしてその構造は今日のところ未解決の問題でこれも今後学者の研究によって追々に明ら
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