冷やしていた。
 このようにして、私の議会訪問は意外の失敗に終ってしまった。これはしかし、決して私を案内したN君の悪い訳でもなく、いわんや議会そのものの罪でもなくて、全くその日の天気のせいと而して通風のよくない傍聴席の不良な空気のせいである事は明らかである。
 そういう特殊な条件の下に置かれた、特殊な人間の頭に映じた議会の第一印象が、かくのごとく特殊なものであり得るという事実だけは、ともかくも一つの記録としてここに誌《しる》しておくのも強《あなが》ち無益の業ではあるまいと思う。[#地から1字上げ](大正十三年)



底本:「寺田寅彦全集 第七巻」岩波書店
   1997(平成9)年6月5日発行
入力:Nana ohbe
校正:noriko saito
2004年11月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全8ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング