場合において、学者は現象の起こっている最中に電光石火の早わざで現象の急所急所に鋭利な観察力の腰刀でとどめを刺す必要がある。そうすれば戦いのすんだあとで、ゆるゆる敵を料理して肉でも胆《きも》でも食いたければ食うことができる。
実験的科学でも実は同様である。甲が同じ事を十回繰り返し実験しても気がつかずに見のがす事を乙がただ一ぺんで発見する場合はしばしばある。
こういう早わざをしとげるためには、もとより天賦の性能もあろうが、主として平素の習練を積むことが必要で、これは水練でも剣術でも同じことであろうと思われる。
学生の時分に天文観測の実習をやった。望遠鏡の焦点面に平行に張られた五本の蜘蛛《くも》の糸を横ぎって進行する星の光像を目で追跡すると同時に耳でクロノメーターの刻音を数える。そうして星がちょうど糸を通過する瞬間を頭の中の時のテープに突き止めるのであるが、まだよく慣れないうちは、あれあれと思う間に星のほうはするすると視野を通り抜けてしまってどうする暇もない。しかし慣れるに従って星がだんだんにのろく見えて来る、一秒という時間が次第に長いものに感ぜられて来る。そうして心しずかに星を仕留め
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