、犬のジョンだけは相変わらずいつものどかな勇ましい姿をして顔なじみの僕の通るのを見迎え見送るのであった。去年の夏この家からは数町を距《へだ》てたある停留所で電車を待っていた時に、向かい側の寄席《よせ》のある路次から、ひょっくり出て来た恐ろしくふとった女があると思って見ると、それが紛れもないジョンの旧主婦であった。
 去年の暮れ近いころからジョンの家の門口でまた若い婦人が時々張り物をしたりバケツをさげたりしているのを見かけるようになった。今度は前よりはもっとほっそりしたインテリジェントな顔をした婦人であった。ジョンジョンと言って呼ばれると犬は喜んで横飛びに飛んで行って彼女の前垂《まえだれ》に飛びついていたのである。ところが、つい二、三日前に通りかかった時に門口で張り物をしている婦人を見ると、年齢や脊恰好は同じだが、顔はこのあいだじゅう見たのとどうしても別人のように思われた。なんだか少し僕にはわけがわからなくなって来た。しかしわが親愛なるジョン公だけは、相変わらずそんなことには無関心のように堂々とのどかなあくびをして二月の春光をいっぱいに吸い込んでいるのであった。
 人間はまったくおせっか
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