「まだ暖かいわ」と言いながら愛撫《あいぶ》していたがどうにもならなかった。
鳥の先祖の時代にはガラスというものはこの世界になかった。ガラス戸というものができてから今日までの年月は鳥に「ガラス教育」を施すにはあまりに短かった。
人間の行路にもやはりこの「ガラス戸」のようなものがある。失敗する人はみんな眼の前の「ガラス」を見そこなって鼻柱を折る人である。
三原山火口へ投身する人の大部分がそうである。またナポレオンもウィルヘルム第二世もそうであった。
この「ガラス」の見えない人たちの独裁下に踊る国家はあぶなくて見ていられない。
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隣家に犬がいる。戸外へは出さないらしいので姿は一度も見たことがない。夜中にほえている声から判断すると相当|体躯《たいく》の大きな堂々たる犬らしい。ところが、この犬が時々不思議な鳴き方をする。人間が何か泣きごとでもいっているかと思うような声を出すかと思うと、首でも締めて殺されかかっているのかと思うような悲鳴を上げる。そうかと思うとかんしゃくが起こってくやしがってきゅうきゅういっているような奇妙な声を出す。だんだん気をつけて
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