床で寝ていたらたくさんの飛行機が西の空から東へかけてちょうど蜻蛉《とんぼ》の群れのように、しかも物すごいうなり声を立てて飛んで行くのが縁側の障子のガラス越しにあざやかに見えた。
 このページェントが非常時の東京市民にわが海軍の偉容を示して、心強さと頼もしさを吹き込むという効果を持ったであろうという事には少しの疑いはない。
 しかし物は考えようである。私はこの百余台の飛行機の示威運動を病床からながめながら、もしかわが聯合艦隊の航空兵器の主力がたったこれだけのしかもあまり世界的に自慢のできない飛行機で代表されているのだとしたら、なんという心細いことであろうという気がした。そうして外国映画や絵入り雑誌の挿し絵で見る欧米列強の飛行隊の壮観を思い浮かべ、一方ではまたわが国の海軍飛行機のあまりにも頻繁《ひんぱん》な墜落事故の記録を胸算用でかぞえながら、なんとなく暗い気持ちにいざなわれるのであった。
 これはおそらくその日の病苦のせいであったかもしれない。[#地から1字上げ](昭和十年十月十五日)
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       *

 蝶や鳥の雄が非常に美しい色彩をしているのは雌の視覚を喜ばせてその注意をひくためだというような説は事実に合わないものだということがいろいろの方面から説明されているようである。自分の素人《しろうと》考えではこの現象はあるいはむしろ次のように解釈さるべきものではないかと思う。
 周囲の環境と著しく違った色彩はその動物の敵となる動物の注意をひきやすく従ってそうした敵の襲撃を受けやすいわけである。そういう攻撃を受けた場合にその危険を免れるためには感覚と運動の異常な鋭敏さを必要とするであろう。それで最も目立つ色彩をしていながら無事に敵の襲撃を免れて生き遺ることのできるような優秀な個体のみが自然淘汰の篩《ふるい》にかけられて選《よ》り残され、そうしてその特徴をだんだんに発達させて来たものではないか。
 戦争好きで、戦争に強い民族なぞの発生にいくらかこれに似た選択過程が関係しているのではないかという気がする。[#地から1字上げ](昭和十年十月十六日)
[#改ページ]

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 先ごろ警視庁で東京市のギャング狩りを行なったときに検挙された「街の紳士」たちの中に、杯やコップを噛み砕いてくちびるから赤い血を出して相手を縮みあがらせるというのがいた。この新
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