映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1−13−22])
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)柱廊《コロンネード》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)交錯的|羅列的《られつてき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ](昭和八年三月、帝国大学新聞)
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     制服の処女

 評判の映画「制服の処女」を一見した。最初に、どこかの柱廊《コロンネード》前に並んだ、ものはなんだかわからないが、何かしら勇ましくたくましい男性的彫像などが現われ、それから男性的なラッパの音に導かれて兵隊の行列が現われる。それだけがこの映画における男性の登場者のすべてである。この、対照のために插入《そうにゅう》されたかと思われる兵隊の行列が女学生の行列に切り換えられてからは、もうずっと最後まで男の役者は全く一人も現われない。これはたしかに珍しい映画であるに相違ない。娘たちはこの学校へいれられたが最後みんなおそろいの棒縞《ぼうじま》の制服を着せられて五か月たつまでは一回の外出も許されずに、厳重な舎監のいわゆるプロイ
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