のである。この二説は磯氏も注意されたように相互に類似している。これを科学的な目で見ると要するに馬の頭部の近辺に或《あ》る異常な光の現象が起こるというふうに解釈される。
次に注意すべきは、この怪異の起こる時の時間的分布である。すなわち「濃州《のうしゅう》では四月から七月までで、別して五六月が多いという。七月になりかかると、秋風が立ち初める、とギバの難は影を隠してしまう。武州《ぶしゅう》常州《じょうしゅう》あたりでもやはり四月から七月と言っている」。また晴天には現われず「晴れては曇り曇っては晴れる、村雲などが出たりはいったりする日に限って」現われるとある。また一日じゅうの時刻については「朝五つ時前(午前八時)、夕七つ時過ぎ(午後四時)にはかけられない、多くは日盛りであるという」とある。
またこの出現するのにおのずから場所が定まっている傾向があり、たとえば一里塚《いちりづか》のような所の例があげられている。
もう一つ参考になるのは、馬をギバの難から救う方法として、これが襲いかかった時に、半纏《はんてん》でも風呂敷《ふろしき》でも莚《むしろ》でも、そういうものを馬の首からかぶせるといいと
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