マの顔には焼けど、額には血、目の縁は黒くなって、そうして平気で揚々と引き上げて行くところで「おしまい」である。
 紙芝居にしても悪くはなさそうである。それはとにかく、これだけの、小さな小さな「火事教育」でも、これだけの程度にでもちゃんとしたものがわが国の本屋の店頭にあるかどうか、もし見つかったかたがあったらどうかごめんどうでもちょっとお知らせを願いたい。
 ついでながら見本としてこの絵本の第一ページの文句だけを紹介する。発音は自己流でいいかげんのものであるが、およその体裁だけはわかるであろう。
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フ、プロースチャデイ、バザールノイ
ナ、カランチェー、パジャールノイ
クルーグルイ、スートキ
ダゾールヌイ、ウ、ブードキ
スマトリート、ワクルーグ
  ナ、シェビェール
  ナ、ユーグ
  ナ、ザーパド
  ナ、ウォストク
ニェ、ウィディエイ、リ、ドゥイモーク、
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右の訳。これもいいかげんである。
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市場の辻《つじ》の
消防|屯所《とんしょ》
夜でも昼でも
火の見で見張り
ぐるぐる見回る
  北は………
  南は………
  西は
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