科学上の骨董趣味と温故知新
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)骨董《こっとう》趣味とは
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)微粒子|輻射《ふくしゃ》は
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ]
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骨董《こっとう》趣味とは主として古美術品の翫賞《がんしょう》に関して現われる一種の不純な趣味であって、純粋な芸術的の趣味とは自ずから区別さるべきものである。古画や器物などに「時」の手が加わって一種の「味」が生じる。あるいは時代の匂というようなものが生じる。またその品物の製作者やその時代に関する歴史的聯想も加わる。あるいは昔の所蔵者が有名な人であった場合にはその人に関する聯想が骨董的の価値を高める事もある。あるいはまた単にその物が古いために現今稀有である、類品が少ないという考えに伴う愛着の念が主要な点になる事もある。この趣味に附帯して生ずる不純な趣味としては、かような珍品をどこからか掘出して来て人に誇るという傾向も見受けられる。この点において骨董趣味はまたいわゆる蒐集趣味と共有な点がある。マ
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