科学に志す人へ
寺田寅彦
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)編輯員《へんしゅういん》からの
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大抵|綺麗《きれい》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ]
−−
新学年開始のこの機会に上記の題で何か書けという編輯員《へんしゅういん》からの御注文である。別に腹案もないからと一応御断りしたが、何でもいいから書けといわれる。自分の学生時代の想い出のようなものでもいいからといわれるので、たださしあたり思いつくままを書くことにする。上の表題は当らない。単に「追憶」とでもすべきであろう。
自分の学生時代と今とでは、第一時代が変っている。その上に自分の通って来た道は自分勝手の道であって、他人にすすめるような道とも思われない。しかしともかくも三十年の学究生活の霞を透して顧《かえり》みた昔の学生生活の想い出の中には、あるいは一九三四年の学生諸君にも多少の参考になるものがないとも限らない。
明治三十六年に大学を卒業してから今日までの学究生活の間に昔の学生時代の修業がどれだけ
次へ
全9ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング