とヒドラのお化けとを比較した人があった。近ごろにはインドのヴィシヌとギリシアのポセイドンの関係を論じている学者もある。またガニミード神話の反映をガンダラのある彫刻に求めたある学者の考えでは、鷲《わし》がガルダに化けた事になっている。そしておもしろい事にはその彫刻に現わされたガルダの顔かたちが、わが国の天狗大和尚《てんぐだいおしょう》の顔によほど似たところがあり、また一方ではジャヴァのある魔神によく似ている。またわれわれの子供の時からおなじみの「赤鬼」の顔がジャヴァ、インド、東トルキスタンからギリシアへかけて、いろいろの名前と表情とをもって横行している。また大江山《おおえやま》の酒顛童子《しゅてんどうじ》の話とよく似た話がシナにもあるそうであるが、またこの話はユリシースのサイクロップス退治の話とよほど似たところがある。のみならずこのシュテンドウシがアラビアから来たマレイ語で「恐ろしき悪魔」という意味の言葉に似ており、もう一つ脱線すると源頼光の音読がヘラクレースとどこか似通ってたり、もちろん暗合として一笑に付すればそれまでであるが、さればと言って暗合であるという科学的証明もむつかしいような
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