異質触媒作用
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)使われている絵具《えのぐ》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)東京|音頭《おんど》の流行と
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)Pb[#「Pb」は縦中横]
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一 帝展
帝展の洋画部を見ているうちに、これだけの絵に使われている絵具《えのぐ》の全体の重量は大変なものであろうと考えた。その中に含まれている Pb[#「Pb」は縦中横] と Zn[#「Zn」は縦中横] だけでも夥《おびただ》しいものであろうと思われた。こんな事を考えるほどに近頃はこうした展覧会の絵に興味を失ってしまったのである。批評などする気にはなれそうもない。
日本画と西洋画の区別が年と共にいよいよ分からなくなって来た。画の主題でも描法でも両方から互いに接近し模倣し入乱れて来ている。それだのにそうかと云って、洋画家で絵絹へ油絵具を塗る試みをあえてする人、日本画家でカンバスへ日本絵具を盛り上げる実験をする人がないのはむしろ不思議なくらいである。
洋画を通じてルソーやマチス
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