ような認識能力の活動を可能にするからである。
 広い意味でのニュース映画によって、人間は全く新しい認識の器官を獲たと言ってもはなはだしい過言ではない。そういう新しい人間としてはわれわれはまだほんの孩児《がいじ》のようなものである。したがって期待されるものはニュース映画の将来である。演劇的映画などは一日一日に古くなっても、ニュース映画は日に日に新たに、永久に若き生命を保つであろうと思われる。そういう将来における新聞はもはや社会欄なるものの大部分を喪失しているか、さもなければ、ほんとうの意味での「記事」となって、真に正確で啓発的な記述に変わってしまっているであろう。
[#地から3字上げ](昭和八年一月、映画評論)



底本:「寺田寅彦随筆集 第四巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店
   1948(昭和23)年5月15日第1刷発行
   1963(昭和38)年5月16日第20刷改版発行
   1997(平成9)年6月13日第65刷発行
入力:(株)モモ
校正:かとうかおり
2003年5月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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